公開後に改修が行われないWebサイト、レポーティングだけのためのアクセス解析、これらはどちらも時間と資金の無駄であり、クライアントにとっての損失です。Webサイトへの投資からリターンを得るためには継続的に改善施策を施す必要があります。分析作業から得られた情報に基づき、パフォーマンスの改善につながる改修を行い、確認し、これを繰り返します。この施策を繰り返すスピードを向上させることがWebサイトのROI最大化につながります。
ROIの改善に取り組むためには、事前に計算方法を定義し、パフォーマンスを測定・比較し、プロジェクト期間中に出来るだけ多くの改善施策を実行します。
1. 事前にROIの計算式を定義する
Webサイトがどのように売上に貢献するかを事前に想定し、計算式を定義します。販売に直結しないサイトの場合は、間接的な売上効果を考慮しましょう。売上に影響する各ページ遷移やコンバージョンのポイントを定め、期待される成果を数値化します。事前の計算式の定義は企画段階で必要な動線やデザインの見直しを促し、数値化された成果指標は後のベンチマークになります。また、戦略の選定や投資の正当化にも事前の計算式の定義は必要です。
2. 測定箇所や方法を選定する
ROIの計算式に含まれる各ポイントに加え、改善施策によって売上の改善が期待出来る箇所を測定箇所に選定します。全ての項目を計測することは不可能であるため、測定箇所は予想できる改善施策の有効性に基づき、優先順位を設定します。更に、改善施策内容の判断に必要な情報を得るための測定も考慮します。事前に測定箇所(とその測定方法)を明確にすることで、改善に必要な情報を十分に得られるようにしましょう。
3. 比較を可能にする
パフォーマンスの改善を確実に実現するためには、施策を比較する必要があります。対照群とのスプリットテストなどを行い、可能な限り外的要因の影響を排除します。更に、多くの比較対象を持つことでROIの改善に必要な判断を速やかに行うことができます。
4. 複合的・長期的な影響を考慮する
ユーザーは様々なコミュニケーションの影響を異なる期間で受け続けるため、個別のマーケティング活動の成果を完全に分離して測定することは不可能です。測定結果を分析する際は、様々なコンテンツ、デザイン要素、タッチポイントの複合的な影響を考慮しましょう。また、単発の購入だけでなく、リピート購入や、購入頻度の増加など、長期的な影響も考慮しましょう。
5. 複数の仮説を同時に検証する
ROIを最大化するためにはその改善施策に費やす時間や労力も考慮します。改善のペースを加速させるためには複数の仮説を同時に検証することが効果的です。Webサイトの改善施策に多くのバリエーションを持たせれば、それだけコストもかかりますが、早い段階での投資は後の大きな利益につながります。
ROIの分析はゴールではなく、スタート地点に過ぎません。現在のROIがわかればそれを改善する方法を見つけ、実施しましょう。分析はプロジェクトの最後にその効果を証明するために行うのではなく、変更や修正が可能なうちに出来るだけ多くの手を打つために行いましょう。WebサイトのROIを最大化するためにはまず、継続的な改善に取り組む意識を持つことと、事前に必要な時間と予算にコミットすることが重要です。