より優れたデザイナーになりたい –– 現状のスキルに対して、漠然とした不安を抱えている方も多くいらっしゃるでしょう。自身の制作物に合点がいかない理由として、やはり「ビジュアル」に関するデザインスキルが不足していると感じているのではないでしょうか。そして、改善策を誰かに相談してみても「経験を積む」という強引な落とし所へ陥りがちではないでしょうか。
しかし、デジタルマーケティングにおけるデザイナーにはデザインスキル以外にも求められるものがあります。それが、プロジェクトにおける戦略や目的への理解です。
このブログでは、デジタルマーケティングにおいてデザイナーが持つべき2つの視点にフォーカスします。デザインスキルの向上だけでない、“デザイナーとしての成長”に繋がる考え方をご紹介します。
1. 上流工程へのコミットメント
デザイン上の課題を把握する
まずは、プロジェクトの最上位にある「目的」を把握しましょう。プロジェクトにおけるすべての行動がこれに基づくからです。例えば「購入促進」が目的であれば、そのKPI(中間指標)は「eコマースへの誘導率」などが考えられるでしょう。プロジェクトの目的とKPIを理解することで、デザインにおいて「eコマースへの誘導ボタン」が“プライオリティ”の高い要素であると導かれます。そして、行動を喚起すること(CTA = Call To Action)もまた必要不可欠となります。
トーン&マナーを定める
次に「ターゲット」の理解です。ターゲットのデモグラフィックやインサイトを理解することで、デザインにおける“トーン&マナー”を決定する為のキーワードを抽出することができます。
例えば、商材を男性用カミソリとした場合。ターゲットのデモグラフィックが10代〜20代男性の学生・社会人であれば、「男性的」「若々しさ」などのキーワードが考えられます。そして、彼らのインサイトが「肌へのケア」を求めているのであれば「潤い」「マイルド」といったキーワードも浮かび上がるでしょう。その結果「フォントをゴシック体にする / 斜体にする / キーカラーを青にする」「水しぶきや水滴など水のモチーフ / 緩やかなグラデーション」などトーン&マナーのルールが次第に定まり、実作業の指針となります。キーワードが明確になることで“デザインの理由”を言語化することもできるようになります。それによって、ディレクターやクライアントに対してのデザイン提案もより説得力を増すでしょう。
このように、プロジェクトの「目的」「ターゲット」を理解することで、デザインにおける“プライオリティー” “トーン&マナー”を明確にすることができます。
2. デザインだけでない、アウトプットに対するコミットメント
さらにデザイナーは、ビジュアルだけでなくフロントエンドまで目を向けることで貢献の幅を広げられます。前述にもある通り、プロジェクトの「目的」や「ターゲット」を理解している事で、その内容をデザインだけではなくフロントエンドにも活かす事ができるからです。
フロントエンドによる「戦略」のサポート
上流工程を理解したことで戦略上必要なデータを蓄積できるようなウェブサイト設計を行えます。例えば、アンケートでAと回答したユーザーがどのコンテンツに対して興味を持っているかというデータも、スクロール値や時間など条件を組み合わせることで想定することができます。「Aという回答にどのようなコンテンツが共鳴するか」というデータは、次回施策の精度を高める上で非常に価値あるものです。フロントエンドにおいても、上流工程を理解することでプロジェクトに貢献することが可能なのです。
“トーン&マナー”をさらに豊かに
アニメーション実装によりデザインの強化も行えます。パララックスを用いればビジュアルに奥行きが生まれ、世界観の表現に厚みが生まれることで“説得力”が増すでしょう。イージングをとってみても、easeOutはエレガントさであったりスマートさを、BounceやElasticはポップさを表現することができます。WebGLやGLSLを用いれば、その圧倒的な表現力でユーザーの体験はよりリッチなものになるでしょう。
上流工程への理解はデザインやエンジニアリングそれ単体だけでなく、“プロジェクトにおけるアウトプット”として包括的にクオリティを向上することに繋がります。
Design is not just what it looks like and feels like. Design is how it works.
「デザインは“単に”どのように見えるかや感じるかでなく、どのように機能するかである」と、かのスティーブ・ジョブズは言葉を残しています。ビジュアルとしての美しさはもちろん向上に努めるべきですが、“アウトプットを担う”ことに対してのマインドを確立することで、デジタルマーケティングにおけるデザイナーとしてプロジェクトの成功(目的の達成)へと大いに貢献できるのではないでしょうか。