多くの製品カテゴリーにおいて、どのブランドを選ぶかということは、消費者にとって重要な問題ではありません。消費者の強い関心と、マーケットシェアを獲得するためには、ブランドが消費者にとって大切な意味を持つ必要があります。激化の一途をたどる競争環境により、ブランドパーパスの有効性は今後も伸び続けるはずです。
ブランドパーパスはブランドと社会が共有し、互いに存在意義を感じる目的です。消費者が担う社会的役割によって、大切な目的は異なるはずです。その目的を全ブランド活動の指針とすることで、ブランドパーパスはビジネス成長の原動力となります。
ブランドパーパスを活用するプロセスには大きく発見、活性化、計測の3段階が存在します。今回の記事では発見と活動について説明します。
ブランドパーパスの発見
ブランドパーパスを発見するうえで重要な要素3つ。ブランドのルーツ、社会的インパクト、そして、ビジネスリーダーのコミットメントです。
1. ブランドのルーツ
ただ消費者の関心が高い社会問題の解決を掲げても、ブランドパーパスとしては成立しません。パーパスは決してやりたいことではなく、やるべきことです。組織はそれぞれの生い立ちや状況によって、社会に貢献できる方法が異なります。だからこそ、パーパスはブランドのルーツに基づいていなければならないのです。
- ブランドが貢献すべき相手は誰か? その相手はどのような社会的役割を担っているか?
- ブランドが保有し、相手への価値となる知識や経験は何か?
- ブランドの行動指針となる価値観や信念は何か? それらが形作るカルチャーとブランドパーパスは合致しているか?
2. 社会的インパクト
ブランドが追求すべきパーパスは、実際に人々の生活に違いを生むものです。幸せ、つながり、探求、誇り、社会貢献という人間の5つの普遍的価値に基づき、計測可能な影響を与えなければなりません。
- どのように人々の生活をより良くするのか?
- 人々の生活にどのような違いを生むのか? あるのとないので社会はどう変わるのか?
- その影響を計測し、証明することはできるのか?
3. ビジネスリーダーのコミットメント
ブランドパーパスは収益を成長させ、有能な人材を魅了することでビジネスの利益につながります。しかし、その達成は全活動のアライメントを要するため、ビジネスリーダーのコミットメントが欠かせません。事業の責任を持つビジネスリーダーのコミットメントを得るためには、パーパスは慈善事業ではなく利益を生むものでなければなりません。
- パーパスはどのように利益を生むのか? どのように収益を成長させ、有能な人材の獲得を可能にするのか?
- パーパスによる収益成長と人材獲得を実現する具体的な戦略はあるか?
- リーダーは、パーパスのビジネス上の必要性を確信し、情熱を持って語ることができるか?
ブランドパーパスの活性化
パーパスはブランドのすべての活動の指針となる起点であり、社会と共有する事業の存在目的として、目標や戦略を定めるものです。ブランドパーパスと利益の相互因果関係や、その実現に向けた戦略が定まれば、その達成を阻むのは無関係な活動のみです。
ブランドパーパスの活性化には、社内エンゲージメント、商品・サービス化、社会奉仕活動、ブランドエクスペリエンス、消費者エンゲージメントの5つの要素があります。
1. 社内エンゲージメント
ブランドパーパスにはビジネスに対するさまざまなメリットが存在しますが、社内の結束だけでも十分な投資価値があると言えるでしょう。エンゲージメントの目的は、その一部でありたいと思ってもらうことであり、組織のなかで機能パーパスが、外で効果を発揮することはありません。
- パーパスに対するリーダーのコミットメントや、ビジネス上の必要性をどのように伝えるべきか?
- 社員の一人ひとりがパーパスを語り継げるストーリーは何か?
- 組織全体がパーパスに沿って動くための成果指標や評価制度は何か?
2. 商品・サービス化
パーパスが収益を生むためにはブランドの商品やサービスに反映されていなければなりません。
- 商品やサービスはパーパスを反映しているか?
- 顧客の重要な問題を解決しているか?
- ビジネスに十分な収益性をもたらすか?
3. 社会奉仕活動
パーパスを体現し、その達成に向けて消費者を牽引するために、ブランドは収益を生む活動だけでなく、社会奉仕活動にも積極的に取り組むべきです。
- パーパスに基づく社会的活動はエンゲージメントを推進する(ブランドの一部になりたいと思わせる)か?
- 一時的なトレンドではなく、普遍的な価値を反映したものか?
- 誰もが参加でき、疎外感を感じないものか?
4.ブランドエクスペリエンス
ブランドのさまざまな活動のなかで、パーパスと矛盾するものは消費者に大きな違和感を与えます。完璧なブランドエクスペリエンスの提供は不可能ですが、可能な限り近いものを目指し、矛盾点の排除に尽力すべきです。
- パーパスに対する経時的な一貫性は保たれているか? 過去のブランドの活動との矛盾点は存在しないか?
- パーパスに対する共時的な一貫性は保たれているか? ブランドエクスペリエンスを提供するさまざまな要素にパーパスとの矛盾点はないか?
- パーパスに合致しておらず、優先的に修正すべき3つのポイントは何か?
5. 消費者エンゲージメント
消費者が、社員よりもパーパスに対する関心や信頼を示すことは期待できません。ブランドはそのオーセンティシティ(真正性)と、強い意志を示すために、言葉ではなく行動を通じてパーパスを体現する必要があります。
- パーパスを体現できる行動は何か?
- その行動に顧客や消費者が参加できる方法は何か?
- その活動の効果を証明し、伝える方法は何か?
企業により一層の透明性が求められる時代において、ブランドパーパスの活用はいずれ避けられないものになるかもしれません。企業の道徳性という意味では、私たちエージェンシーのビジネスにも大きな影響を与えるものです。いまはまだブランドパーパスの黎明期かもしれませんが、その発見、活性化、計測に対するニーズは、今後伸び続けるはずです。次回はブランドパーパスの計測について考えをまとめます。
※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。