ブランドの過去を見つめ直し、この先のあるべき姿を導くブランディング施策
1950年に設立された国内大手の玩具メーカーの株式会社バンダイ(以下、バンダイ社)。「たまごっち」は、そのバンダイ社を代表する商品のひとつで、1996年の発売以来、世代を超えて愛され続けている人気のおもちゃです。
発売25周年を迎えた2021年にはイベントや新商品を販売するなど、常に新しいことを試みているたまごっち。時代のトレンドを大事にしながら、通信機能やタッチパネルを搭載したりと、デバイス自体も進化してきました。
実はたまごっちのように、バンダイ社が権利を100%持っている自社ブランド商品は、あまり多くありません。何十年先と今後のブランディングを考えた時、筐体(玩具本体)に頼らずにどうやってIPやキャラクターを広げていくべきか、という課題を抱えていたといいます。そこで、担当の方々と話し合いを重ねるなかで、バンダイ社が過去から現在で積み重ねてやってきたことを見つめ直し、この先どうあるべきかを考えていくための、原点回帰とも言えるワークショップを開催することとなりました。
具体事例について
チームの意識を「共通化」するワークショップを設計
ブランドに対して強い想いを持つ、たまごっちに携わるバンダイ社のメンバー(商品企画、プロモーション担当、ライセンス管理担当の方々)計10〜15人に集まっていただき、全4回のワークショップを設計しました。このワークショップには、FICCがコミュニケーション設計やプロモーションの案件などで、クライアントに日々向き合いながら行っている「体験設計」の考え方を余すところなく取り入れています。
このワークショップの目的は、たまごっちを将来どうしていきたいのか“指針”を明確にすることです。参加者全員が腹落ちした状態を築いて、きちんと言語化することをゴールに据えました。さらに、チームビルディングの側面から、メンバーの特性や強み、関心など、お互いが理解し合える状況をつくれるよう設計しました。
今回、全体の流れを設計する際に取り入れたのは、短期間でデザイン思考を実践するための手法「デザインスプリント」です。昨今では、さまざまな企業でデザイン思考を学ぶ研修やワークショップが開催されています。ただ、ノウハウを学ぶための場だけになってしまうと、腹落ちができずに着地してしまう可能性もあります。一方でデザインスプリントは実践として、具体的な解を出すために考えて行動することが求められます。限られた時間の中で、発散と収束を繰り返しながら答えを導くことができるよう、会ごとに緻密に設計していきました。
会を重ねて見出した、たまごっちのパーパス
初回のワークショップは、マシュマロチャレンジというレクリエーションを取り入れたり、参加者が話しやすい雰囲気をつくることに集中して、チームビルドとアイスブレイクを中心に行いました。会終了後には毎回、“I Like(良いと思っていること)”と“I Wish(改善して欲しいこと)”をレビューしあうことで、参加者のコミュニケーションを促進させて改善を積み重ねることで、より次の会が円滑に進むようにしています。マシュマロチャレンジは、レビューの大切さを知ってもらうためのひとつの施策として取り入れたものです。
たまごっちメンバーのそれぞれが考えてることや、商品に対しての想いを発散して書き出すワークを行うなかで、人の感情を動かすための“違和感”や“トゲ”をどう導き出すかということが、テーマの一つになりました。エンターテインメントには、人の欲望を刺激して熱狂できるものであることが求められています。会を重ねるうちに「たまごっちの使命は、まだ誰も見たことがない新しいものをつくること」という大義を見出していきました。
ワークショップ後には、今後、異動頻度が多い現場でも後任に引き継ぎながら、きちんと使っていける知識となるよう、レポート(ブランディングブック)を作成。納品後も、実際に現場の言葉や考え方としてご活用いただけるものとなりました。
お客様の声
ワークショップを通じて、レポートという形でブランディングブックを制作していただきました。私はそれを“秘伝の書”と呼んでいるんですが。新しい取引先に説明する際にそれを共有すると、伝わるのが速くて、実用的で、非常にありがたいです。
ー 株式会社バンダイ メディア部 プロデュース第二チーム アシスタントマネージャー 佐藤公彦様
コラボレーションするアーティストやクリエイターの人にも、価値観がすごく伝わりやすいものになってるんですよね。でも、ガチガチに固めてしまわずに敢えて余白を残してもらっていて、想像力を掻き立てるものになっているのがすごくいいなと思っています。
ー 株式会社バンダイ メディア部 プロデュース第二チーム チーフ 三宅のぞみ様