若い世代の新たなファンを増やすブランディング施策
京都に本社を置き180年以上の歴史を持つ種苗メーカー、タキイ種苗株式会社(以下、タキイ種苗社)の新しい家庭菜園ブランド「UETE」のブランド開発および制作をお手伝いしています。
中高年のファンが中心となっている家庭菜園業界。若い世代にも家庭菜園の楽しさや収穫の喜びを知ってもらい新たなファンを増やしていきたい、と考えていたタキイ種苗社からお声掛けをいただきました。家庭菜園をもっと身近な存在に。そしてもっと「人」と「農」が近づいていくときっとよりよい世界に繋がるはず。そんな想いで始まったプロジェクトです。
具体事例について
ブランドを取り巻く状況を再整理してつくるコンセプト
まず、新ブランドのターゲットをリサーチしていくなかで「アウトドアやDIYのような手間暇をかけることに価値を見出せる人たちと、家庭菜園は相性が良いのではないか」と仮説を立てていきました。そして、自分で野菜を育て食べることに価値を感じる人たちをターゲットとして考え、その方たちが受け入れやすい世界観を作り、新しいブランドとしてアプローチしていくことを提案しました。
ブランドのコンセプトを考える際は、「コンテクストプランニング※」という考え方を活用し、新しいブランドを取り巻く状況を再整理しました。これにより、家庭菜園をまるで観葉植物のようにオシャレに楽しむ「遊べる菜園」というブランドコンセプトを提案。クライアントからもコンセプトに共感をしてもらいプロジェクトが始動しました。また、ロゴとネーミングに関しても、双方から意見を出して総合的に決めていきました。
ブランドのビジョン・ミッション・バリューは、ブランドホロタイプ®・モデル※を活用して設計。最終的にはFICCで考えたものと、クライアントが考えたものを融合させて決めていきました。ブランドを育てている段階で、こちらの意見を押しすぎてしまうと、クライアントの無意識下で「自分たちで作ったという実感」が持てなくなる可能性もあります。一体感を出しつつ、ネーミングを含めてブランドの根幹となる考え方の部分をスピード感を持って一緒に作っていきました。FICCが意見を押し付けるのではなく、クライアントも含めてひとつのチームという関係性を大切にしています。
自分たちの商品体験を施策に活かす
実際にクライアントから商品を提供してもらい、いちごの苗をメンバー全員で育てました。当初「家庭菜園にあまり興味がない」と言っていたFICCメンバーが前のめりにハマっていく姿も見られました。自分たちがユーザーになった体験があったからこそ、体験設計フレームワークを使用した際、よりスムーズに「ブランドがユーザーへ提供できる価値」の洗い出しができました。サイト内のコンセプトにある「自然と触れる」「つくる」のワードはそこから出てきたものです。自分たちでクライアントの商品を体験することが何より大切であり、自分たちの体験に基づいたものだからこそ、ユーザーの体験に近いであろう言葉が出てきたのです。
ゼロからブランドを立ち上げるプロジェクトのため、ローンチまでの第1フェーズは、プロジェクトの解像度の均一化を目指すことと、ブランドの資産をしっかり構築していくことを主に意識し、必要に応じて社内外のメンバーとコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めていきました。施策は多岐に渡るので、リソースやナレッジをお互い補い合いながら、個々人の強みを活かしながら進めていけるのがFICCの強みです。
※コンテクストプランニング:高広伯彦氏 考案。商品を取り巻く社会や生活者、業界などの視点から商品の意味や価値を考える手法
※ブランドホロタイプ®・モデル:Coup Marketing Company代表 音部大輔氏が考案したブランドマネジメントの実施の根底となるフレームワークです。