Webでブランディングをするということは、ただデザインがきれいなサイトを制作したり、一時的な話題を引き起こすだけが正解ではありません。クライアントの持つニーズに応じて、継続的に課題を解決する…つまり、ビジネスで継続的に成功する方法の「答え」はそのクライアントごとにあるはずです。
そこで今回は、FICCがクライアントのニーズをどのように最新のノウハウや技術と結びつけ制作物に落とし込んでいるのかを、事例や働く「人」とともに紹介したいと思います。
FICCでは2012年のクリスマスシーズンに、洋菓子ブランド「アンリ・ルルー」とファッションブランド「バーニーズ ニューヨーク」のデジタルサイネージを手がけました。どちらも、Webの技術を使ってクリスマスシーズンの店頭へ集客することが課題となりました。
今回はこの施策の企画〜実装・設置までを担当した、シニアプロデューサーの森啓子(keikoさん)とクリエイティブプロデューサーの福岡陽(akirafukuokaさん)にお話を伺います。
「遊ぶ人」中心に技術を選定する
ーまずは上の動画をご覧ください。これはアンリ・ルルーでのキャンペーンのムービーですが、どんな仕組みで動いているのか、教えていただけますか。
福岡「店頭のディスプレイはFlashを使って、スマートフォン側はHTMLで制作しました。QRコードやURLをブラウザに入力することで、アプリなどをダウンロードしなくてもすぐに遊べるように設計してあります。
なるべく多くの人に遊んでもらいたかったので、OSのバージョンの古いスマートフォンにも対応できるような仕組みを構築しました」
ーあえて最新の技術を使わなかった部分もあるということですか?
福岡「そう。当初はHTMLで作ることも考えていたのですが、短い制作期間のなかゲーム部分の見せ方で柔軟な対応が必要だったので、HTMLではなく、あえてFlashを使う方針に変更しました。
もし今度作るとしたら、HTML5とかWebGLでやってみたいですね。そのための実験も少しずつしているんです」
広告は「やってみたい」と思わせることがすべて
ー今回のキャンペーンにはどのようなこだわりがありましたか?
福岡「例えば、今年に放映されたある飲料のCMで促していたことは「あなたの味覚を信じてください。うまいかどうかは、あなたが決める」と、単に「飲む」ではなく、その先の行動として「評価をしよう」ということをアピールしていました。僕たちの仕事は、購買に至るまでの理由を作るということなんだと思っています」
福岡「今回は、特にミッドタウンの店舗前を歩いているお客さんに、足を止めて遊んでもらうことが第一だったので、足を止める「理由」を作るということをとても工夫しました。更には、失敗したりうまく行かなくても面白かったと思ってもらうこと…つまり「言いたくなる体験」にすることにこだわりました。
それはわかりやすいデザインで工夫したと言うより、キャラメルがボックスに入らなくても「惜しい!」と思ってもらえるような絶妙なゲームバランスを意識したということですね。今回は、そんな風に単純なインセンティブではない価値が生まれたのが財産だったと思います」
リアル→Webのストーリーを複数のシーンに合わせて設定
ーなるほど。それでは森さん、キャンペーンの効果はいかほどでしたか?
森「クリスマスシーズンの大きなモールでのキャンペーンとあり、TV にも何度か取り上げられました。Facebookでの投稿・シェアに「TVで見た!」というコメントもあって、PRにつながったんだと嬉しかったですね。
また、ゲームの商品を引き換えに店舗に入ってくれたお客様に、店員さんの方から「ぜひ、SNSでいいね!してください」とひと声かけていただくストーリーを作ったことで、キャンペーン直後からシェアや「いいね!」数を大幅に伸ばすことができました。リアルで行うキャンペーンにFacebookなどで「いいね!」してもらえる動線を作れたことは、店舗の方にもとても喜んでもらえました」
福岡「六本木という場所柄、IT関係の職業でゲームの技術に興味がある人が試しに来るということもありました。それと、小さな子どもたちが純粋に、楽しそうだから遊んでみるというシーンも目にして嬉しかったですね」
O2Oの正体は『Offline to Online to Offline』
ーこちらの動画は同時期に行われたバーニーズ ニューヨークのキャンペーンですが、モバイルを使ったデジタルキャンペーンというと、O2Oという形態の施策が近ごろ話題になっています。この2つのキャンペーンもそれに近いところがあると思うのですが、実際に手がけてみてどのような課題がありましたか?
森「これは普段の実感値としても思うことですが、O2Oと聞くと『オンラインからオフラインへ』という単純な構図をイメージしやすいけれど、実は『オフラインtoオンラインtoオフライン』であることが多いんですね。オフラインから、オフラインの店舗へ集客する…そのために単純なクーポンなどではなく、オンラインを間にレイヤーとして挟むことで実現することもできると思います。ただ今回、それぞれを最適化して連携させることは、とてもチャレンジングなことでした」
福岡「そうですね。スーパーを例に挙げると、スーパーに全く行かない人というのはなかなかいないと思うんです。ただ、スーパーの入口から直接、特定の商品の棚に足を運んでもらうにはどうしよう?さらに、そこにWebなどを絡めるってどういうことだろう?と考えたり…」
森「そうだね。私はあるファッションブランドのウィンドウディスプレイを担当した経験もあるのですが、今回のようにインタラクティブなディスプレイの場合、店頭の看板やプロジェクションそのものを見たり、そこから出ている音を聞いて「あっ!」と思ってもらう。見え方は同じでも、その見せ方はまた違うんだよね。
ゲーム部分のクオリティやバランスを考えつつ、ウィンドウディスプレイと、Webの技術を使う部分と、プロジェクション…それぞれの一番いい見せ方、使い方を考慮するというレイヤーの違う課題が今回の事例には存在していましたね」
ブランド×スマートフォンの可能性が広がった
ースマートフォンとリアルの店舗を直接絡めた施策は、FICCでは今回、初の試みでしたがいかがでしたか?
森「スマホが使えたのは大きかったですね。ガラケーのようにボタンをぽんと押して使うのとは違うアクションができたのは、作っていてもやってみても面白かった点です。自分で触って遊ぶ感覚の演出ができるのはこういう事例ならではだと思いました」
ー今年に入ってから、FICCではShickの「大乱戦!ヒリヒリバトル キャンペーン」でソーシャルゲームにも挑戦しました。
福岡「ヒリヒリマンの案件や昨年のクリスマスの事例でよかったと思うのは、ゲームシステムとクライアントの目的をうまく合致させられたということですね。この案件は、また機会を改めてお話したいですね!」
クリエイティブ・プロデューサーの学生アシスタント
福岡さんは、FICCではCP(クリエイティブ・プロデューサー)というポジションに在籍しています。この部署は社内でもデザインやエンジニアのスペシャリストが集まり、様々な案件の大きな方向性を決める特殊な部署ですが、この春にはCPのポジションに異例の、アルバイトが入社しました。
ー九州大学の中元寺くんは福岡さんのアシスタントとして、当初のインターンの予定からアルバイトに切り替え、3週間ほど在籍しました。中元寺くんはどのような業務をしていましたか?
福岡「全体的な制作物のサポートや、クオリティを上げていく作業でした。細かいエフェクトのところを飾ってもらったり。最後にはお題を与えて、制作をしてもらいました。どの技術でやるかは自由にして、極力本人に任せてやってもらいましたね」
ー目に見える彼の成果物としては、どんなものがありますか?
福岡「テストケースとしては、JAYPEGのプロフィールや制作物から名刺を生成する機能ですね。生成した名刺をプリントアウトできるというところまで、彼が作ってくれました」
FICCの仕事=人やテクノロジーに「向き合う」こと
ー福岡さんのアシスタントって珍しいですよね。エデュケーションの意味も大きかったと思いますが、アシスタントが付いてみてどういう感想を持ちましたか?
福岡「やっぱり、人によって問題の解決方法はさまざまあって、その違う答えを突き合わせるのはとても大事だなと思いましたね。試行錯誤の中でソリューションを導き出すということの大切さを感じました。『最適解はこう』と決め付けるのではなく、解答は一人ひとりの中から引き出してみるものだなと思いました。
相手がどうであれ、コミュニケーションの中で引き出される解答はコミュニケーションの中でしか生まれてこないということで、それをいかにしてどう上手い答えを引き出すのかというのは僕にとっても課題だと思いました」
ーアルバイトさんにも社員と同様に考えさせて、答えを出してもらっているんですね。FICCの制作事例もそうですが、1つ1つの課題に向き合って答えを出していくという特徴は、社内教育でも実際の制作案件でも根源的には同じなのかもしれません。
福岡「そうですね。また、こういった若い子のチャレンジは、自社サービスがあるFICCからこそできるものだなと思います。
単純にサイトを作ってください、というだけじゃないところがFICCらしいなという感じがしますね」
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