FICCはデジタルエージェンシーとして、クライアントが抱えるさまざまなビジネス課題を解決するため、デジタルマーケティングに取り組んできました。そんなFICCのクライアントの多くは、ナショナルクライアントをはじめとした大手企業。予算の規模はもちろんのこと、求められることが多岐に渡り、かつ大きな成果が求められるプロジェクトばかりです。
そういったプロジェクトにおいて、FICCのディレクターは日々何を意識して業務に取り組んでいるのでしょうか。そこで今回は「ディレクターが大手企業のクリエイティブを生み出す上で意識すべき7つのこと」と題して、FICCディレクターメンバーのマインドセットをご紹介いたします。
FICCが取り組む、大手有名企業ならではのプロジェクトの特徴
まずはじめにFICCが取り組むプロジェクトにおいて、クライアントが大手企業であるからこその特徴をご紹介します。
その1つが「予算規模」です。FICCのディレクターは、決まった施策の制作ディレクションだけでなく、クライアントが抱えるビジネス課題を解決するための施策の設計からプロジェクトに加わります。予算規模に応じて、Webサイトやバナーなどの範囲にとどまらず、動画やリアルイベントなど、効果を最大化させるための施策を提案し、実現させていきます。
また2つめの特徴は「意識すべき範囲が広い」こと。大手企業のプロジェクトとなると、デジタル領域をFICCが担当し、テレビCMや店頭プロモーションなどの他領域を別の代理店が担当するというケースも多くあります。その場合でも、FICCが関与していないプロモーション領域に対しても、クリエイティブやコミュニケーションの整合性が失われないよう気を配る必要があります。
そして3つめの特徴は「クライアントが積み上げてきたブランド価値」を崩さないこと。大手企業は、長年の企業活動により築いてきたブランド価値があり、消費者にとってもその企業に対するイメージというものが存在します。そのためFICCはただビジネス課題を解決するだけでなく、消費者が持っている企業イメージを意識したクリエイティブを生み出さなくてはなりません。
こういった大手企業のプロジェクトならではの特徴を意識し、FICCはクライアントが抱えるビジネス課題の解決に取り組んできました。
FICCのディレクターに求められるのは「マーケティング戦略を理解した上で、クリエイティブを実現すること」
では、こういった大手企業のプロジェクトを進行する上で、FICCが大切にしていることはなんでしょうか。それは明確な「目的と戦略」です。
大きな予算のもと、複数の施策を設計し、制作範囲や関わる人も広いプロジェクトでは、目的に沿ったマーケティング戦略がないと方向性がバラバラになってしまいます。明確な「目的と戦略」があることで、施策一つひとつに「なぜこの施策を行うのか」がはっきりとし、予算の無駄をなくし、投資対効果を高めることができるのです。
そしてFICCではマーケティング戦略を中心とした各種戦略を立案した上でプロジェクトを進めるため、FICCのディレクターにはそれらを理解するためのマーケティング知識が求められます。戦略を理解しているからこそ、クリエイティブの目的が明確になり、より大きな価値に繋げることができるのです。
ディレクターが大手企業のクリエイティブを生み出す上で意識すべき7つのこと
それでは、FICCディレクターが多岐にわたるクリエイティブ制作を行う上で、意識している7つのポイントをご紹介いたします。
1. 戦略を理解して制作する
上述の通り、戦略を理解してクリエイティブに落とし込むのがディレクターの役割であるとFICCは考えています。そのため、戦略のない “面白いから” “ウケるから” といった感覚的なクリエイティブは行いません。
ディレクターは戦略をしっかりと理解した上で、どのようなターゲットに、どういうコミュニケーション設計を取るべきか、どういう印象を持ってもらうのかなどをプロデューサーと話し合いながら、クリエイティブを考えていく必要があるのです。
またクライアントに対して、Webサイトやバナー広告、SNS、さらには動画やイベントまでと、幅広いクリエイティブ手法を横断的に提案するケースもあります。その際に大事なのは、「ユーザーの動き(カスタマージャーニー)」を意識してクリエイティブを制作すること。各タッチポイントで、ユーザーの態度変容に繋がるようなクリエイティブ制作が求められます。
2. プロデューサーとディスカッションできる環境を構築する
企業によってはプロデューサーとディレクターが分かれて存在せず、ディレクターポジションの方がマーケティング戦略もつくることもあるでしょう。しかし大手企業のプロジェクトとなると、施策範囲が非常に広く、ディレクターひとりで戦略策定から行うと、クリエイティブに専念しづらくなることが懸念されます。
FICCではプロデューサーとディレクターとそれぞれのポジションが存在し、戦略策定をプロデューサーが行うことで、ディレクターがクリエイティブに専念しやすい体制を取っています。しかし、プロデューサーからディレクターへ戦略や施策が「落ちてくる」のではなく、プロデューサーとディレクターがそれぞれの専門分野を活かし、ディスカッションを通じて戦略・施策策定を行うというアプローチを大切にしています。
そうすることで、ディレクターは戦略の理解が深まり、さらにクリエイティブ視点を取り入れることで戦略・施策がより良いものになっていきます。
そして、このようにプロデューサーとディレクターがディスカッションできる環境を構築できるのは、FICCが代理店を通さずにクライアント企業と直接取引させていただいているからこそ。直接クライアントからヒアリングすることで、ディレクターはクライアントの課題を正確に把握し、プロデューサーと共にディスカッションが可能になるのです。
3. ターゲットユーザーとのタッチポイント = クリエイティブの範囲と捉える
もしもクライアントが保有するブランドのプロモーションを任された場合、デジタルエージェンシーとしてクリエイティブ制作の範囲は、Web上だけではありません。プロモーションにおけるブラントとターゲットユーザーのタッチポイントは、リアルからWeb上にいたるまで多数存在します。
そのためディレクターが考えるクリエイティブ制作の範囲は、ターゲットユーザーとのタッチポイントすべてが当てはまる可能性がある、ということを常に意識するべきです。商品パッケージそのものや店頭でのコミュニケーション、そしてイベントなどのオフラインの施策なども、クライアントのビジネス課題を解決するという目的を達成するためには、われわれディレクターが考えるべきクリエイティブ制作の範囲になりうるのです。
4. 目的達成が第一。自分たちが直接実行できるかが重要ではない
FICCがデジタルエージェンシーとして大切にしているのは、「クライアントのビジネス課題を解決すること」です。クライアントのビジネス課題を解決するという目的達成のためには、自分たちが直接実行できる、もしくは制作できる範囲以外でも提案を行います。
「できるベース」で考えるのではなく、「目的達成ベース」で考えることをディレクターは意識しなくてはいけません。そのため、時には外部パートナーと連携し、クリエイティブ制作を行うこともあります。優秀な外部パートナーをプロジェクトに巻き込めるかどうかも、ディレクターのスキルの1つと言えるでしょう。
5. クリエイティブの成功の判断軸は「数値」で可視化する
クリエイティブの成功をどう評価するか ー それは施策結果の「数値」で評価します。ユーザーにウケるかもという視点でトレンドを模したり、なんとなくの感覚で制作されたクリエイティブでは、成功か否かの判断基準が曖昧になり、次への施策のフィードバックや投資判断ができなくなります。
定量的なKPIを設定することで、仮に数値が未達であったとしても、施策を振り返り、そこから次にどう繋げていくかをプロデューサーと共に検証していくことができます。すべてが思惑通りにいかないこともあるため、成功した・失敗したで終わらせるのではなく、失敗しないように、いかに成功確度を高めていくかというアプローチが大切です。
6. 道徳的価値観や社会情勢など、広い視野を持つべきである
昨今はプロモーションが炎上するケースが世の中で目立つようになりました。デジタルエージェンシーとしては、制作したクリエイティブで伝えたいメッセージが正しく伝わらず、本来伝わってほしくない伝わり方をしたり、炎上に繋がるようなネガティブな結果になるのは避けないといけません。
そこでディレクターに求められるのは、道徳的価値観や社会情勢を含めた広い視野を持つことです。同じクリエイティブでも、ユーザーにどのように伝わるかは社会情勢や世相によって異なる可能性があります。クリエイティブの効果を最大化させるためには、広い視野を持ってユーザーのインサイトや情報の伝わり方などをプロデューサーと議論していく必要があります。
7. 自身を高められる環境をつくりあげる
ディレクターとして意識すべき点をご紹介してきましたが、最後にご紹介するのは、ディレクターのスキルアップできる環境についてです。FICCに求められるプロジェクトの多くは予算が大きく、求められる範囲も多岐に渡り、非常に大きな責任の伴うプロジェクトが多いです。
そして、そのようなプロジェクトで生み出されるクリエイティブの多くは、多くの人たちの目に触れるクリエイティブです。そのため、たくさんの反応やフィードバックをもらうことができますし、クリエイターとして純粋に嬉しい瞬間でもあります。
そして高いレベルを求められるプロジェクトであれば、優秀なクリエイターたちと仕事をする機会も増えていき、1つのプロジェクトを通じて大きな学びを得られる機会にもなるのです。
そして上述の通り、「できるベース」ではなく「目的達成ベース」での提案を行うFICCだからこそ、プロジェクトを通じてFICCは常に挑戦をし続け、個人も企業も常に成長できる環境をつくり上げてきました。
ディレクターとしての成長に終わりはありません。自らを成長させるような環境に身を置くこと、また成長が求められるようなプロジェクトをつくりあげることがディレクターには求められるのです。
おわりに:クライアントのビジネスを考えたクリエイティブ制作のために
時代とともにデジタルマーケティング領域において、できることが増えている反面、複雑になりつつあります。しかしながら、上述のFICCのディレクターの7つの心がけは時代に左右されるものではなく、デジタルエージェンシーとして至極当たり前のことでしょう。
そして上記のポイントの中には、代理店を通さず、クライアントと直接やり取りができるからこそ取り組めることもあります。クライアントの課題を解決することを第一に考えるFICCは、毎回クライアントとしっかり向き合い、一緒になってクライアントのビジネスを考えてきました。今後もその姿勢は変わらないでしょう。
デジタルマーケティング市場全体を盛り上げるためにも、クライアントのビジネス課題を解決するクリエイティブはどうあるべきか、いま自分たちができる範囲にとらわれず、目的達成のための最適なクリエイティブはどうあるべきか ― ディレクターは常にクライアントのビジネスを考えたクリエイティブ制作を心がけていくべきなのです。
FICC広報担当