変化し続ける世界において、自分らしい価値を生み出す方法 ーFICCとSHEが考える「価値を作る共同体」ー

人を自由にする学び「リベラルアーツ」を経営の核に置くFICC。

2020年6月、その「リベラルアーツ」と「SDGs」をテーマに、代表の森 啓子が女性向けキャリアスクールを展開するSHE株式会社とオンラインイベントを開催。「学びを『自分の価値』に変換する方法」というタイトルのもと、講演とワークショップを行いました。150名を超える参加者にも関わらず、終始アットホームな雰囲気。チャットでは、一人ひとりの気づきや疑問などが多く寄せられました。

イベント終了後、森とSHE広報の小池 彩加さんによる対談を実施。2社の共鳴する部分や、各社がとらえる社会課題や取り組みなどについて、イベントの感想も交え語り合いました。

一人ひとりのストーリーから価値が生まれる社会づくりを

▲左:SHE 広報 小池 彩加さん / 右:FICC 代表 森 啓子

今回のイベントは、FICCスタッフの伊藤 真愛美が企画し実現したものです。きっかけは、あるインターネット番組でSHEの代表・福田 恵里さんと出会った伊藤が、2社の理念には共通する部分が多分にあるのではと感じたこと。そのときの出会いについて、このように話します。

小池:森さんとお話したとき、個人としても経営者としても大事にしていらっしゃる「一人ひとりの個性や人間力を伸ばす」という考え方にとても共感しました。

SHEは、女性向けのキャリアスクールを展開している企業です。単にスキルを習得するだけではなく、自分らしい生き方・働き方ができるようサポートするコミュニティを形成しており、累計約2万名の会員様にご利用いただいております。

その中で大事にしているのは、「こうあるべき」という固定観念を押し付けるのではなく、その人自身の中にある「ありたい姿」を引き出しアプローチしていくことです。

森さんの価値観に共通したものを感じ、FICCの事業やこれまでの人生で見いだされたその具体的なアプローチ手法について、SHEの会員様にもお伝えいただきたいと思いました。

森:ありがとうございます。私自身も、SHEさんの理念に共感する部分がとてもありました。

FICCが常に起点としているのは「人」です。「一人ひとりの可能性や存在を貴重なものとし、そこから社会的・経済的価値が創造される」……そんな社会を築くことを目標としています。

いま小池さんがおっしゃったこと、そしてSHEさんのウェブサイトにある「『私たち』を定義するものなんて、何もない。」というメッセージ、それに基づいた活動が、いつも自分が大事にしているリベラルアーツの考え方と共通していると感じました。

私自身、日本・オーストラリア・アメリカで教育を受ける経験をしたのですが、残念ながら日本では人の可能性が見過ごされることが多いと感じます。

たとえば「なぜ自分はこうするのか」ということが、社会の時間軸でのみ考えられる傾向があるんですね。学校にいるから学ぶ、社会に出たから働く……など行動の根拠が社会の時間軸になっていて、個人の存在意義が軽視されているように感じます。

本来はそうではなく、個人の一貫したストーリーがあるはず。私としてはそんな「一人ひとりのストーリーを起点に、価値を創る共同体」であればよりよい社会になると信じ、それを理想論で終わらせないためにも、まずはFICCで自分が実現することを大事にしています。ですからまずは私自身が、自分のストーリーの核にある「リベラルアーツ」を経営に結びつけているんですね。

その上でFICCが目指しているのは、「ブランドが持つパーパス(社会的意義)と、人の可能性でイノベーションを起こす」組織です。関わる人すべての存在意義、そしてブランドの社会的意義を掛け合わせることで、未来に価値を創造し続けたいと考えています。

小池:SHEとしても、一人ひとりの存在意義を大事にしたいという点で同じです。

現在はまだまだ出産後の離職率が高かったり、ジェンダーギャップ指数も改善されていないなどの課題があります。ですが一方で、柔軟な働き方に対して少しずつ追い風が吹いてきているとも感じていて。

とくに今は、新型コロナウイルス対策によりリモートワークが普及するなど、働き方の選択肢が増えてきました。課題はまだ多いですが、生き方を自由にカスタマイズできる環境やムードに変化しており、「仕事か家庭か」一方だけではなく両方を選ぶことも可能になってきています。

とは言え、全員が「バリバリ働きたい!」というわけではありません。幸せの定義は人それぞれです。その人の内側から「幸せ」の定義が導かれて、自分自身で生き方を選べるようサポートをしていきたい。そんな受容や豊かさのある社会を、SHEが起点となって実現できたらと思います。

「SDGs」を自分ごと化し、サスティナブルな価値を創造する

今回のイベントのテーマは、リベラルアーツとSDGsの視点から見た「学びを自分の価値に変換する方法」。

森は自身の経験談を交えながら、リベラルアーツの本質でもある「自分の『想い』を通して社会を見ることで、独自の問いが生まれ、ひいては価値につながる」というメッセージを伝えました。

講演後、実際に参加者一人ひとりが「自分の大切な想い・視点」を言語化するワークも実施。このテーマが選ばれた背景には、森のこんな考えがあります。

森:以前、SHEさんが会員の方に向けたコロナ禍におけるアンケート結果を拝見したのですが、皆さんただ不安がられているのではなく、「これからどう自分らしく生きていくべきか」を前向きに考えられていることに気づきました。

まず、私のミッションは「リベラルアーツを通じて人の可能性や学びの本質を伝えていく」ことです。それが皆さんの後押しになればと、今回のテーマにも選びました。

もうひとつのテーマは「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」です。これは国連加盟国が2030年までに達成を目指している17の目標ですが、社会課題というと一見遠い世界のように感じるかもしれません。

ですが、ここでも自分の想いが起点になれば、自分ごと化していけるはず。それでリベラルアーツの考え方を掛け合わせ、 SDGsをマクロではない自分の価値創造の場としてとらえていただけるようにと思いました。

そのときに重要なのが、「自分の価値が誰のためになり、どんな問題を解決するのか」を意識することです。想いを価値に換えていけるかどうかはその両立にかかっているんですね。つまりSDGsとは単に「社会のために良いことをしよう」ということではなく、「社会課題にアプローチすることで、新たなマーケットが生まれてビジネスになる」ということを知っていただきたかったのです。

小池:「社会に対してこう働きかけたい」というビジョンを持ちつつ、それを自身の市場価値にどうつなげていけばいいのか……SHEとしてもその部分をより手厚くサポートしていきたいと考えていた中で、森さんのお話で最短ルートを教わったような気がしました。

「課題があるところに価値が生まれる」。その実現の仕方について、視点がクリアになったのではと思います。

「答え」ではなく「問い」を提示する導き方

小池:イベント中もさまざまなコメントが寄せられましたが、とくに印象的だったのは、終了後にTwitterで「ワークを深めたいので一緒にやりませんか?」という会員様同士の声※があがっていたことです。単発で終わらせず、学びをさらに深めようとされる方が多くいらっしゃいました。※実際の会員様の声(Twitter)はこちら

あとは、「実際、仕事につなげる方法だと思っていたけれど、もっと本質的な心の持ちようを変化させられるイベントだった」という声もありましたね。その場限りのティップスではなく、今後も持ち続けられるマインドセットを得られる機会になったようです。

森:皆さん、本当に素敵なコメントをくださり感謝しております。

とくに嬉しかったのは、質問の内容がその方自身の背景を起点としたものだったことです。「正解はこう?」という話ではなく、日々の生活の中でピュアに感じていることとつなげて聞いてもらえたのは嬉しかったですね。

一人ひとりの想いや視点を起点として社会とつながることについてお話させていただいたので、それが伝わってさっそく対話が生まれていると感じました。また、ワークで対話する中で自分の価値に気づくことができ、その後も深堀りしていこうという姿勢にも感動しました。

今回のテーマにおいて、「正解・不正解はなく、一人ひとりの存在が貴重である」ということを伝えたかったので、あらためてこれが自分の目指していた形だなと感じています。

小池:私があらためて痛感したのは、いま必要なのは「こうあるべき」という価値観の決めつけではないということです。「あなたはどうしたいの?」と、一人ひとりの中の理想を問い続けるコミュニケーションこそが求められているものなのだなと再確認しました。

幸せの定義は人それぞれで、しかも変化していきます。その定義を見つけていただくために何ができるだろうと考えていましたが、森さんの「『答え』ではなく『問い』を提示する」導き方は、大変勉強になりました。

このコロナ禍は固定観念や既成概念でできた壁を壊していく機会

現在コロナウイルスの影響で、世界中にさまざまな変化が訪れています。その中で新しく課題として意識していることは何か、そしてどんなチャンスを見いだしているか。最後に「これから」のことを話し合いました。

:いま最も大きい課題は「国と国の断絶」と「倫理観の欠如の露呈」だと思います。

その中であらためて大切にしたいと思うのは、「お互いの存在意義に思いを馳せる」こと。共同体にいる者たちが、お互いの存在意義をもって社会的・経済的価値を「共創」できる社会にすることが必要だと思います。

ただその「共創」の部分においては、オンラインのつながりによって加速している印象もありますね。物理的距離に関わらず精神的距離感が近づき、心理的安全性も高まっています。リモートの環境になったからこそ、固定観念でできた壁を壊せる部分もあるのではないでしょうか。

小池:まさにSHEとしても同じことを感じています。実はおうち時間が長くなったことから、スクールへの申込数が2倍ほど増加したんです。

もともと弊社はオフラインとオンラインのハイブリッド型コミュニティを築いていたのですが、コロナを機に拠点をクローズすることになってしまい、リアルな場を生み出す熱がなくなるのではという不安もありました。

ですがそれを解消するために「Webで3密」というキーワードを掲げ、「密接なサポート、密度の高いコンテンツ、親密なつながり」を実施しています。オフラインの場が持てない時期だからこそ、いかにオンライン体験を熱狂感を持ってやれるかに軸足を置いており、結果、物理的距離に関係なく、熱量の高いコミュニケーションがとれるようになりました。

このようにコロナがきっかけで、不可能だと思っていたことが実は可能だったんだという気づきもたくさんあるように思います。

森:固定観念や既成概念など、思考を自由にすることを阻むものを「バイアス」といいますが、今のコロナ禍では良い意味でそれがはがれている側面もありますね。

これまで当たり前だった世の中の構造や定義に合わせるのではなく、それぞれの存在意義で価値を共創していける世の中ができつつあります。それは、まさにFICCが掲げているビジョン「あらゆるブランドと人がパーパスによって、未来を創り続けている世界の実現」そのものです。そのビジョンの実現に向けて、FICCとしても個人としても、一つひとつの出会いを大切にこれからも活動を続けていきたいと思います。

「変化し続ける世界において、わたしたちはどう生きていくのか?」

その答えは、変わり続ける社会に軸を合わせるのではなく、変わらない自分の「想い」を軸に社会をまなざすことで、きっと見つかるはずです。

FICCとSHEもまた、それぞれの想いを大事にしながら「一人ひとりの存在意義から価値が生まれる」社会を目指しています。本イベントはまさに、全員の想いによる価値の共創でできあがった時間となりました。

Text by 土門 蘭

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