MITメディアラボ石井裕教授とFICCの哲学から読み解く、パラダイムシフトを起こす“独創・協創・競創”とは?

石井教授の第一部講演動画は、記事最後よりご覧いただけます。

去る11月11日に開かれた「MITメディアラボの石井裕教授×FICC オンラインイベント」。約2時間にわたって開かれた本イベントの第一部では、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ副所長・石井裕教授による講演が、続く第二部ではプルデンシャル生命保険ライフプランナー・宮島妙さんを交え、石井教授とFICC代表・森啓子の3名によるディスカッションが行われました。

FICCはブランドマーケティングエージェンシーとして、ブランドや企業はもちろんのこと、人の想いや存在意義(パーパス)を社会の価値に変えていくことを大切にしている会社です。

価値観が激動しパラダイムがシフトし続ける現代において、私たちに求められているのは、世界の変化のベクトルを見定める視座に、揺るがない哲学、そして変化に柔軟かつ迅速に対応する適応力。そう考える森は今回のイベントで、100年、200年先ものビジョンを創造する石井教授と、人の生き方に向き合い続けている宮島さんと共に、「急速に変化を続ける今、私たちはどこへ向かうのか? 求められることは何か?」を読み解きます。より多くの方々にその哲学に触れていただき、“気づき”を得る機会になることを願って。

株式会社エフアイシーシー 代表取締役 森啓子

第一部:「独創・協創・競創のための美学・止揚・物語 未踏峰連山を目指すクリエイターへのメッセージ」

FICC代表の森がMITメディアラボ所長の石井教授に出会ったのは、森がマサチューセッツ芸術大学大学院生だった15年前に遡ります。講義のために同大学院を訪れた石井教授の思想やビジョン、言葉、作品……その全てはまさに“目から鱗”となる強烈な体験でした。身近な事象を引用しながらもポエティックで美しく、これまで触れたことのない新たなものの見方に引き込まれていきました。教室の中だけで交わされるコミュニケーションに留まらず、時空を超えて、教授の見ている世界がまるで眼前に現れたかのようだったと森は言います。

この時たった一度きりの講義でしたが、多大な衝撃と感銘を受けたことがきっかけとなり、以後、森は石井教授と親交を深めることになりました。

アメリカで過ごした大学・大学院時代の6年間を、「ひたすら自分への問いに向き合い、感覚を研ぎ澄ませ、自分の視点と他者の視点を交えながら対話する日々だった」と森は振り返ります。この時の経験が現在、「ブランドや社会、企業のビジョンはもちろんのこと、人の想いや存在意義をどのように社会の価値へと変えていくのか?」という問いに真剣に向き合うFICCのビジネスに活かされていることは言うまでもありません。

マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ副所長 石井裕教授
石井教授が受賞したACM SIGCHI 生涯研究賞(ACM SIGCHI Lifetime Research Award)

さて、NTT ヒューマンインタフェース研究所勤務、GMD研究所客員研究員などを経て、1995年にMITラボ教授に就任した石井教授は、「ディジタル情報と計算に物理的実体を与え、直接操作可能(タンジブル)にする」というアイデアから生まれた「タンジブル・ビッツ」に取り組み、これまで多くの作品を発表してきました。さらに2012年からは、タンジブル・ビッツの概念をさらに進化させた「ラディカル・アトムズ」という世界観を提唱し、“原子レベル”でプログラミングすることで物体の形状や性質を自由に変化させるという、驚きのイノベーションに取り組んでいます。

世界最大級のメディアアートフェスティバル「アルスエレクトロニカ」など数多くのアート・デザインの国際会議に招致され、世界的な評価を得て、2019年には米国計算機学会(ACM)のコンピューター・ヒューマン・インターフェイス部門(SIGCHI)において最も権威ある「生涯研究賞」を受賞されました。

タンジブル・ビッツの概念を進化させた「ラディカル・アトムズ」を表す図。詳しくはこちら

どこへ向かって行くのか?

今回のイベントの第一部では「独創・協創・競創」をテーマに、石井教授の講義はスタートしました。「独創=世界に通じるオリジナリティの徹底追求」、「協創=尖った独創性を有する少数精鋭チームを創り、ビジョン共有・共鳴を通して切磋琢磨すること」、「競創=世界のライバル達と最前線で競いつつ、彼らをあっと言わせる夢と追い抜かれる恐怖との間で、連続飛躍すること」であると端的に指摘しています。それを踏まえたうえで、不連続かつ断続的に起こる変化に直面する現代に生きる私たちが、「世界はどっちへ向かっているのか?」「自分はどの方角へ進むのか?」という問いを発した時に、まず自分のいる場所を俯瞰する必要があると石井教授は言います。“木を見て森を見ず”ということわざがありますが、引き合いに出されたのは“人工衛星的な高度の視座”。というのも、世界地図をつくってもランドスケープは急速に変わっていきます。そこで大事なのは地図ではなく、コンパス(磁針)であるということ。特にこのインターネット時代においては、情報も流水のごとく変化していきます。このように不確かな未来を抱く現代において、自分たちがどこに向かって進んでいくのか、その進むべき方角に明確な信念を持つことが重要なのです。

また、変化というのは極めて破壊的である、という石井教授の言葉も象徴的です。2010年にアイスランドで起きた噴火により欧州の空域を火山灰が覆い尽くし、飛行機の自動航行システムが機能を失ったことを例に挙げ、そのような困難に面した際に求められるのは「直感」でしかないと言います。ただ、その本能に近い直感というものを瞬発力をもって作動させるためには、美学・哲学を常々磨いておく必要があり、その力こそが、破壊を機会へと変えていくことになるでしょう。

「MITラボがどういう機関なのかよく尋ねられるのですが、様々に異なる考えを持った人が同じ場所にいて、議論が尽きません。しかし、その違った考え方がぶつかり合うからこそ、新しい機会が生まれます。それが分野を超越した新たな流れに向かっていく。これこそがTransdisciplinary(=学際)と言われもののエッセンスではないかと思うのです」(石井教授)

まさにこれは、FICCが大切にする「学際的リベラルアーツ」による価値創造への考えや想いと輪を描くようです。お互いの存在を感謝し、多様性を受け入れ、価値創造を実現する。そのようなリベラルアーツに基づいた考えを、組織の文化としてだけでなくビジネスの指標として組み込むことで、ビジネスと組織文化の本当の意味での融合が実現する、とFICCは強く信じています。

人の数だけ存在する問いは、その数だけ答えがあるのは当然のこと。同時にそれは、答えがないという“答え”なのかもしれません。しかし、そこに光があるのではないでしょうか。

一つの正しい回答があることを前提とせず、一人ひとりが自身のユニークな視点をもって問いに向き合う。そしてそのプロセスを通じ、社会に繋がる既成概念を覆すさらなる問いを創造する。FICCでは社員が様々な視点や気づきを持ち寄り、対話によってクロスシンクする場を定期的に設けているのもそのためです。個々の想いや視点を掛け合わせることで、事業部、チーム、プロジェクトなど組織内の様々な共同体において新たな価値創造へと繋げていく。そのようなイノベーションを生み出したいと考えているのです。

FICCの組織テーマ「ONE FICC ー CROSS THINK TO INNOVATE」。詳細はこちらにてご覧いただけます。

登山家になるか、造山家になるか

今般の新型コロナウイルスによる混乱の事態にも明らかなように、既にテクノロジー至上主義の考え方は破綻し、さらに絶対安全という“神話”はもう存在しないと言えるでしょう。石井教授は、イギリスの政治家ウィストン・チャーチルの「人間が歴史から学んだことは、歴史から何も学んでいないということだ」という皮肉な言葉や、岩手県の花巻を訪れた際に見た詩人・宮沢賢治の肉筆原稿についても言及します。書いては消すことを繰り返し、苦悩と葛藤をしながら言葉を選んだ詩人の、身体の痕跡と精神の軌跡が残された手書き原稿。その中にこそ感動の源泉はあるのだ、と。

滑らかに、まるで踊るように、石井教授が発する言葉は紡がれていきます。これまでに制作した作品を実例に挙げながら、時に哲学者や政治家、文筆家、アーティスト、発明家らの言葉をメタファーとして交えながら、様々な分野を横断していきます。石井教授の「深いアイデアが思いついた時は、それをアートとしても表現したいし、デザインとしても形にしたい。そしてサイエンスやテクノロジーの世界にも貢献したい」という言葉の通り、そう、私たちがそれぞれ生きている世界や考えている物事は、決して分断されているのではありません。科学、数学、経済、政治、スポーツ、音楽、文学、美術……と、すべては繋がりがあります。その繫がりを発見しようとするかどうか。さらにその発見を自身の仕事や生き方にどう活かすのか? そう問われているようです。

最後に石井教授は、「出杭力=打たれても打たれても突出し続ける力」、「道程力=原野を切り開き、まだ生まれていない道をひとり全力疾走する力」、「造山力=未踏峰連山を海抜ゼロメートルから自らの手で造り上げ、世界初登頂する力」という、“三力”について話してくれました。「自身がMITを選んだ理由は、頂が雲に隠れて見えない高い山であったからです。しかし、それは幻想でした。そんな山など存在しなかったのです。山そのものを自分の手で海抜0メートルから創り上げ、世界初登頂すること。そして世界に“私も登りたい”と言わせること。それが生き残りの条件です。技術は陳腐化して置き換えられていきます。でも、本当の哲学や美学、ビジョンというものは未来に永続して世界を照らし続けます。その未来を生きている人たちに何を残したいのか、どう思い出されたいのか。そんなことをいつも考えています」(石井教授)

私たちは問われます。「あなたは登山家なのか、造山家なのか?」そして、「その山はどこにあるのか?頂上は見えているか?」と。

※ 石井教授の第一部講演動画は、こちら。もしくは、記事最後よりご覧いただけます。

第二部:「既存価値体系を壊し、パラダイムシフトを起こす『卓袱台転倒力』とは」

続く第二部では、「幸せで安心なライフプラン&マネープラン」をテーマに掲げるプルデンシャル生命保険ライフプランナー・宮島妙さんを交え、「独創・協創・競創・美学」という4つのテーマから、3者の視点を交えたディスカッションが行われました。

プルデンシャル生命保険株式会社 東京中央支社 コンサルティング・ライフプランナー 宮島 妙 氏

さて、宮島さんの仕事であるライフプランナーはその名の通り、金銭面に関わることだけでなく、例えば「これからの働き方をどう変えたいのか?」「子どもの教育についてどう考えるのか?」「親の介護にどう関わるのか?」といった個々の問題に積極的に関わり、その人らしく生きるために何ができるかを考える仕事です。宮島さんは「ライスワーク(ごはんを食べていくために働くこと)×ライフワーク(自分の使命と思える仕事をすること)」を掲げ、唯一無二の働き方を見つけることを大事にしているそうです。今回のイベントのテーマの一つである「独創・協創・競創・美学」は、彼女の仕事においても大きな鍵となっていると言えるでしょう。

まず「独創」について。特に日本では、真にオリジナルなアイデアや突拍子のない発想が尊重されにくく、調和を重んじる傾向にあります。第一部で石井教授が「出杭力=打たれても打たれても突出し続ける力」の重要性を話してくださったように、出る杭を打つ現代社会を生き抜くため、FICCでは自身のストーリーを語る力を伸ばすことを大事にしています。

FICCが経営のコアに掲げる「学際的リベラルアーツ」は、日本では一般教養ととらえられがちですが、もとは古代ギリシャ・ローマで人を自由にする学問として誕生しました。要は、いかに自分の思考を固定観念や既成概念から解放し自由にできるか、ということを追求する学問です。FICC代表・森は、「日本社会は異質なものを同質化する傾向が極めて強いですよね。なぜかというと、異質なものが何かわからないことによる周囲の恐怖心があるからだと思います。その心が出る杭を打つことになる。しかしこれは、同質化しようとする側の責任だけではなく、異質である側も語る力が必要だと思うのです」と話します。FICCが「あなたの心が踊るものは何か?」と徹底的に社員一人ひとりと話し合う時間を設けているのは、独創の源泉とは、社会の属性ではなく、自分自身のストーリーから生まれるものであると森は考えるからです。そしてストーリーを語るうえで重要なのは、「なぜ?」について一歩踏み込むこと。そうでなければ、自身の物語に説得力は生まれません。

森が語るリベラルアーツ。詳細はこちらにてご覧いただけます。

宮島さんはこの自身のストーリーを語る力について、毎年訪れているというフィンランドの学習方法を紹介しました。幸福度や学力の世界ランキング上位に常に位置するフィンランドでは、偏差値ではなく“学び”が生活に活かされています。高校生にもなると自立した人間としてみなされ、例えば、自身の口座を開設するというのは象徴的です。自分の将来の生活や生き方について具体的に考えるきっかけとなるでしょう。学校の先生が進路相談で、「友達とどんなトピックを話している時にワクワクするか」や「どんなカテゴリーの本が好きなのか」などを聞きながら生徒の進路をサポートするということにも、宮島さんは大きな感銘を受けたと言います。

ここで石井教授は、「人は“どうやって(How)”という疑問に偏りがちですが、“なぜ(Why)”を追求することが大事」だと話します。なぜを追求し語る力を持つことで、本質となる美学や哲学の次元まで高めることができるだろう、と。

多様性が生む独創性、そして協創・競創へ

そして「協創」について。森は「建設的批判による議論の価値がなかなか認められず、切磋琢磨の機会損失が大きい現代社会において知の協創を実践するには?」と質問を投げかけ、多様性の大切さに触れました。ただし、「多様性と言っても、それ自体がゴールになってしまうと多様でないものを多様にしようというところで留まってしまう」と言います。多様なことが貴重なことであるところまで昇華させることが肝要であるとし、前述した個々の独創の物語から社会の課題や価値へと循環させる取り組みを続けることを強調しました。習慣化することで組織の中の仕組みを変えていくという試みです。

また、宮島さんは、職業の枠を超えて様々な分野の人々と交流することで見え方は変化すると言います。今回のイベントのように、「ブランドマーケティング×○○」と、○○の中には例えば、都市開発、科学技術、メディアなど多様な分野や物事を掛け合わせることで、自身の考えを揺さぶるような発想に出会える、と。

石井教授にとってその“掛け合わせ”とは、学生や同僚たちと共に山を登り、また造山を目指すことにあります。タンジブル・ビッツやラディカル・アトムズというビジョンを持って、個々の独創と掛け合わせることこそが協創だと言えるでしょう。

「人によっては、ビジョンやコンセプトという抽象的なものが好きな理論家タイプもいますし、具体的なことをコツコツと進める人もいますよね。私が鼓舞したいのは、地に足をつけて技術を習得し世の中にある問題に適用しながら、一方で、高い次元から新しいコンセプトを考えることを並行してやるということです。きっと、抽象度の高いビジョン・理念と、具体的なものがいつか繋がる日はやってきますから」(石井教授)

続いて「競創」とは、宮島さんにとっては、「お客様がどんな仕事の方と繋がれば役に立てるのかを考えながら、争うというよりは共に創っていくという考えに近い」と言います。コンペティションで1位をとるかどうかではなく、例えばプルデンシャルという商品の保険であれば「商品×○○」という意味で、他のマーケットと共に創ることを大事にしたいと強調しました。

そして石井教授は現在取り組むラディカル・アトムズを例に挙げ、「マテリアルサイエンスから大きな刺激を受けています。マテリアルそのものを新しくデザインし、現在主流の『ヒューマン・“ガジェット”・インタラクション』ではなく、その先に来る『ヒューマン・“マテリアル”・インタラクション』に大きな未来を感じている」と話します。人間とマテリアルの関係性を変化させることで、遠く離れた場所にいる人の動きや熱をも触覚として感じることができ、また、過去の記憶にも触れることができるという革新的なビジョンは、まさに独創・協創・競創によって実現するのでしょう。

ブランドマーケティングにおいては、マーケティングのあり方、ビジネスのあり方そのものを変えていく必要がある、と森は力を込めます。既存のマーケットの中で刈り取り合うようなあり方ではなく、企業独自のマーケットをつくることが重要です。社会的意義とは創造性といっても過言ではありません。そもそもなぜブランドは存在するのか?という問いを常に持ちながら、その存在意義を考え、人の心を動かし記憶に残るクリエイティブ(=美学)を創出する。そして社会と経済の価値へと変えていく。それによって切磋琢磨し、抜きつ抜かれつの関係として競創・共創できるブランドマーケティングの姿ができれば、ビジネスと社会的意義の繋がりも必ず見えてくるはずです。

常に“今”を基点とし、人々の記憶に残る存在になれ

森は、「イノベーションを生み出す仕事において、美学と人のストーリーが存在するかを常に意識し、人々の記憶に残るものを目指すことが重要です。FICCでは、それぞれの人の独創や物語とそれらのクロスシンクにより、イノベーションを起こすプロセスを開発しています」と話します。しかし逆説的に、未来に残るイノベーションについて考えた時、その時間軸を紡ぐものは唯一、人々の記憶でしかありません。

私たちにとって時間とは、過去・現在・未来を基軸にするのが当然と思われがちですが、ここで森は、「すべては現在しかない」という、ローマ帝国時代の哲学者・アウグスティヌスの思想を紹介します。「過去は現在の記憶の中にあり、現在は意識の中にあり、未来は現在見る期待と意欲の中にある」という哲学者の教えは、石井教授の「未来記憶」という思想にも通底するようです。人々は過去の記憶を思い出し、不確かな未来を思い描くものですが、「僕は未来を想い出す。遠い未来の人々が、僕の見た夢を思い出してくれる夢を通して」と、詩的で美しく強いメッセージを石井教授は放ちます。このように、200年後もの未来を視野に入れて創造を続ける石井教授は、「美学」についてこう話します。

「何が美しいかを感じるのはとても大事なことですが、一つ、未完成であることに惹かれます。完璧に完成してしまってはどうにもならない。例えば、4Kや8Kの素晴らしく高精細なピクセルで画面の隅々まで埋め尽くしてしまう映像よりは、松尾芭蕉の俳句のように字間や行間を想像力で埋めることによって、遥かな宇宙を心の中に描くことができる、その喜びが大切だと思うのです。楽しいことだけでなく寂しさや孤独にも目を向け、静寂や間、聞こえない・見えない余白を残し、それぞれが生きてきた人生の記憶や感動によってその余白を埋めて初めて完成する。そういう表現が僕はとても大事だと思っています」

そう、独創・協創・競創、そして美学の哲学を通して見えてくるのは、やはりそこに「あなたの存在があるか?」「あなたのストーリーはあるか?」ということです。

「人は自由に見えても自由ではないな、と思う時があります。自分の物語を生きていいんですよ。真っ白なキャンバスがあって自由になんでも描いていい。でも思考のフレームとは、いろんな人と対話しないと、縛られているものがあることに気づかないもの」(宮島さん)

「存在していないことによって、かつてそこにあった存在が想起される。そんなプレゼンス・オブ・アブセンスという概念に強い関心があります。今そこにいる、あるいは今そこにいない。または、永久に失われてしまった。人生はまさにその繰り返しだと思います。ただ、そういう概念というのは私たちを突き動かす強いエネルギーになっています。「不在」から想起される「存在」はものすごく心に響いてくる。だからこそ、人類の歴史は、私たちが語り継がなければならない未来記憶だと思うんです」(石井教授)

本イベントを開催させていただいたことで、FICCにとっても多くの気づきがありました。今なぜFICCが存在するのか?という問いに常に立ち戻り、関わる人々の存在意義が創造の価値の中にあるのかを問い続ける。そして、あらゆるブランドと人が社会的意義ある存在意義によって、未来を創り続けている世界の実現のために、一つひとつの“今”を大切に励んでいきたいと思います。

※ 石井教授の第一部講演動画は、下記にてご覧いただけます。

執筆:中村志保

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