FICCが行うブランドマーケティングは、企業の経営課題を社会課題と掛け合わせ、生活者に対して価値のあるものを提供しながら理想的な市場を創り続けていくことを追求しています。そのなかに、ブランドの商品やサービスのプロモーション領域で、企業の生活者に対する活動を支援する、メディア・プロモーション事業があります。今回は、関西を拠点に独自の事業を行うメディア・プロモーション事業 京都(以下、FICC京都)をご紹介します。
FICC京都について
遡ること2013年に創設されたFICC京都。この事業ができたのは、当時東京本社で働いていたメンバーの京都移住がきっかけでした。Webサイトを中心に、クリエイティブ制作を行うプロダクションとして事業が始まり、2017年にはABテストなどのデータを起点にデザインを評価する「データドリブンデザイン事業」になりました。その後、東京の事業が長く携わっていた広告やマーケティング関連の仕事に合流し、2018〜2020年にかけて「メディア・プロモーション事業」へとシフトしました。
FICC京都が行う独自の事業
FICC京都のクライアントは、中小・大企業の消費財ブランドやラグジュアリーブランドです。「企業の経営課題を社会課題と掛け合わせて、ブランドマーケティングの力で課題を解決する」という考えのもと、FICCのマーケティングのフレームワークや、メンバーが持つクリエイティブの知識を「資源」として活用して価値提供をしています。そして、そこで培ったさまざまな業界との実績を、社会を俯瞰し未来を予測するための視点へと繋げています。得意としているのは、マーケティングにデータを活用すること。成果に繋がるようスピード感をもってPDCAを回しています。それだけでなく、新サービスの立ち上げという新たな価値提供をしているのも特徴です。
また、地域活性化に向けた活動にも積極的に取り組んでいるFICC京都。自分たちが目指す地域経済が活性化した世界とは、地方でも若い人が夢を持ち、活躍できる仕事の場が創出されていること。そのために、メンバーそれぞれが研究・挑戦したいプロジェクトを推進し、活発な意見交換が行われています。
FICC京都が今後目指す事業
FICC京都が目指すのは、「これからの世界に残したいと思える企業やブランドづくり」。地域経済を活性化し社会貢献をしたい企業に向けて、時代に合わせた成長ができる価値提供を目指します。また、同じ価値観を持つ企業やブランド同士をマッチングさせて、ブランディングの戦略サポートをすることでイノベーションを起こしたいと考えています。実現するためには、今以上に幅広い業界知識とSDGsへの深い理解が必要です。その未来のために、メンバー各自の興味と掛け合わせたコンサル事業や勉強会を行ったりと、日々の業務のなかでさまざまなチャレンジを積み重ねています。
どんなメンバーがいるの?
FICC京都では、メンバーそれぞれが肩書を超えるユニークなポジションを確立しています。徹底したデータ解析をするクリエイティブディレクター、巧みなファシリテーションと完璧な議事録が取れるデザイナー、漫画の絵コンテが描けるプロデューサー、SNSでバズるデザイナー、メディア副編集長兼ライター兼カメラマンであるディレクターなどです。経歴やそれぞれの興味関心を掛け合わせ価値創造できるチーム。すべてのメンバーの天才性を解放し、個々がそれぞれに価値提供できるフィールドを増やすことがミッションです。「人」を大切にし、その能力を最大限発揮することで、企業のビジネスに貢献していきます。事業部長 村松とマネージャー 安藤・山本のインタビュー記事はこちらからご覧いただけます。
プロジェクト事例
これまでにFICC京都では、企業やブランドのマーケティング戦略の立案や、プロモーション施策の立案、実行、オウンドメディア運用など、課題解決に向けて多くのお手伝いをしてきました。案件を通じて、個々の能力を伸ばしていける生産性の高いチームづくりをしてきたため、メンバーの知見や経験が蓄積されているのも特徴です。以下に、代表的な事例とそこに関わるメンバーの工夫や想いをご紹介します。
◎ストッケ/STOKKE
北欧ノルウェーのベビーブランド「ストッケ」の年間を通してさまざまなプロモーション施策を行ってきました。担当したメンバーを代表し、肥川紫乃と安藤秀一に担当領域と印象に残った施策を聞きました。
肥川:人間工学に基づいて設計されたイス「トリップ トラップ」が間もなく50周年を迎えるストッケ。日本で「ブランド認知を拡大していきたい」というご依頼をいただき、2021年の年間のデジタルマーケティングやプロモーションの提案を行いました。私はプロジェクトリーダーとして、案件に関わりました。
ストッケが大事にしているのは、「親子の距離を近づける」ことです。子どもと物理的な距離を近づけることで、子どもが親の愛情を感じて安心してチャレンジすることができ、自己肯定感が育まれていくからです。そのコンセプトの訴求のために、パーセプションフロー®・モデル※を使用して各施策に落とし込みました。コンセプトを訴求しながら、製品ごとのプロモーションや、ブランド施策を通年で行いました。
安藤:主にブランドのLPや各施策のディレクション、広告のクリエイティブを担当しました。ストッケのブランドコンセプトが「なぜ大事なのか」「どのように製品に落とし込まれているか?」が伝わるように、グローバルの素材を再編集しデザインの構成を行いました。コピーから製品紹介へと、徐々にブランドコンセプトが伝わるよう、導線を設計しました。各広告から誘導し購入へ繋げるLPデザインや計測も含めてFICCで担当しています。
参考:ストッケジャパンブランドサイト
【印象に残っている施策】
ー 名前に込める想いキャンペーン
肥川:Instagramのハッシュタグ「#ストッケ親子の距離」を付けて、生まれてくる我が子の名前に込める想いを投稿してもらうキャンペーンで、妊婦の方々を対象に通年で行いました。妊娠時期からストッケのことを知ってもらいたいという理由と、親と子どもの距離が物理的にも気持ち的にも近い妊婦さんだから参加したくなる内容にしたかったです。これから産まれてくる子に対しての想いが伝わる素敵な投稿がたくさんあり、ストッケのブランドと活動の認知に繋がる施策となりました。
ー 子育て情報配信メディア「KIDSNA(キズナ)」とのタイアップ
肥川:学術的な視点で製品を語ることができるストッケの強みを活かし、脳科学の先生と「親子の距離が近いことがなぜ良いのか」についての対談記事を作成しました。企画、撮影、取材に同行し、全体を通してディレクションを行いました。
参考:対談記事
ー オンラインセミナー「ストッケアカデミー」
肥川:コロナ禍により両親学級が無くなってしまったり、気軽に相談できる相手が不在などの悩みを持つ妊婦の方へ向けて、「妊婦の方同士の交流の場」としてのオンラインセミナーを設計しました。理学療法士、助産師、睡眠コンサルタントなど専門家の先生ときちんと質疑応答ができ、参加者が徐々に仲良くなれるよう少人数制で設定しました。開催後、参加者のInstagram投稿に別の参加者からコメントがあり、参加者同士の繋がりが生まれた施策でした。
参考:ストッケアカデミー
ー 新ブランドコンセプトのローカライズ
安藤:今秋から、ストッケのブランドコンセプトが「Here we grow(成長する、親子とともに)」へと変わりました。グローバルから英語で共有されたものを、日本でいかに浸透させ伝えていくのかがFICCのミッション。英語の直訳では伝わりきらないニュアンスを汲み取り、社内でトランスクリエーションを行っています。世界観をどのように伝えるかを考えた際に、「子育てってなんだろう?」の「問い」から始まる文章で作成しました。今後も、さらにパワーアップしてストッケをサポートしていけたらと思います。
参考:Here we grow 成長する、親子とともに
◎タキイ種苗株式会社「UETE」
京都に本社を置き180年以上の歴史を持つ種苗メーカー、タキイ種苗様の新しい家庭菜園ブランド「UETE」のブランド開発および制作をお手伝いさせていただきました。家庭菜園をもっと身近な存在に。そしてもっと「人」と「農」が近づいていくときっとよりよい世界に繋がるはず。そんな想いで始まったプロジェクトです。担当したメンバーを代表し、山本洋平と伊勢卓馬に話を聞きました。
【プロジェクトの背景】
山本:すでに通販事業を運営されてたお客さまは、コロナ禍ということもあり事業が伸びていました。しかし、中高年の方を中心にファンが多いことが課題と感じていたそうです。若い世代の方にも家庭菜園の楽しさや収穫の喜びを知ってもらい新たなファンを増やしていきたい、というお声掛けをいただいたのが取り組みのきっかけです。
ターゲットに関してリサーチしていくなかで、アウトドアやDIYのような手間暇かけることに価値を見出せる人たちと家庭菜園は相性が良いのでは?と仮説を立てていきました。自分で野菜を育て食べることに価値を感じる人たちをターゲットとして考え、その方たちが受け入れやすい世界観を作り、新しいブランドとしてアプローチしていくことを提案をしました。
ブランドのコンセプトを考える際には高広伯彦さんの「コンテクストプランニング※」という考え方を活用し、新しいブランドを取り巻く状況を再整理しました。これにより、家庭菜園をまるで観葉植物のようにオシャレに楽しむ「遊べる菜園」というブランドコンセプトを提案しました。そして、お客さまからもコンセプトに共感していただきプロジェクトが始動しました。※商品を取り巻く社会や生活者、業界などの視点から商品の意味や価値を考える手法
伊勢:私はプロジェクトがスタートした段階でジョインし、プロジェクトマネージャー兼クリエイティブディレクターを主に担当しました。今回、ゼロからのブランドを立ち上げるプロジェクトなので、ローンチまでの第1フェーズでは、プロジェクトの解像度均一化を目指すことと、ブランドの資産をしっかり構築していくことを主に意識し、必要に応じて社内外のメンバーとコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めていきました。
ブランドは始動したばかりなので、今はより広くの人に知ってもらうためのフェーズです。今後しっかりとブランドを育て、売上に繋げるためのプロモーション施策を考えています。施策は多岐に渡るので、リソースやナレッジをお互い補い合いながらも、個々人の強みを活かしながら進めていけるのがFICC京都の強みです。
【印象に残っていること】
ー お客さまとチームで進めていく
山本:ロゴのパターンが上がってきた際に、社内だけでなくお客さま全員から意見をもらいながら、どうするかを決めていきました。ネーミングに関しても、双方から意見を出して総合的に決めていきました。FICCが意見を押し付けるのではなく、お客さまも含めて一つのチームであったと思います。
伊勢:ブランドホロタイプ®・モデル※を活用し、ブランドのビジョン・ミッション・バリューを設計したのですが、最終的には僕らが考えたものとお客さまが考えたものを融合させて決めていきました。ブランドを育てている段階で、こちらの意見を押しすぎてしまうと、お客さまの無意識下で「自分たちで作ったという実感」が持てなくなる可能性もあります。一体感を出しつつ、ネーミングを含めてブランドの根幹となる考え方の部分をスピード感を持って一緒に作っていけたのがよかったです。
ー 自分たちが商品を使ってみた体験を活かす
山本:商品を担当の方から提供していただき、実際にいちごの苗をメンバー全員で育てました。当初、家庭菜園にあまり興味がないと言っていたメンバーが前のめりにハマっていたりと、自分たちでお客さまの商品を体験することが何より大切だと思いました。
伊勢:自分たちがユーザーになった体験があったからこそ、体験設計フレームワークを使用した際、よりスムーズに「ブランドがユーザーへ提供できる価値」の洗い出しができました。サイト内のコンセプトにある「自然と触れる」「つくる」のワードはそこから出てきたものです。自分たちの体験に基づいたものだからこそ、ユーザーの体験に近いであろう言葉が出てきたと思っています。
◎祭エンジン
FICC京都のメンバーが、一般社団法人明日襷(あしたすき) 代表理事の宮田宣也さんの想いに共感し立ち上げた、地域の祭を応援するプロジェクト『祭エンジン』。全国各地の名産品の購入によって、地域に残る神社や祭を応援できるサービスです。プロジェクトが発足された経緯はこちらからご覧いただけます。主に担当している、伊藤里加子、角屋桃子、石沼竜一に話を聞きました。
参考:祭エンジンサイト
角屋:日本や日本文化が好きなので、多くの人にその魅力を知ってもらい守りたいと思っていたなか、祭は古来から続く日本文化のひとつにも関わらず、減りつつあるという話を伊藤から聞いたことがきっかけで、プロジェクトに参加しました。主に祭エンジンの企画や記事制作に携わっています。また、祭エンジンから派生し、祭を大切に想う学生や社会人の女性たちが集まるコミュニティ「祭研究女子会」の立ち上げ時から関わっています。祭に興味を持ってもらえるような内容の新聞を月一で作成しています。海外在住のメンバーとコミュ二ケーションを取り、海外から見た日本の祭についての記事を編集しています。ここの記事を転用し、祭マガジンの執筆も行っています。
祭研究女子会のおかげで、このリモートワーク下でも日本を超えさまざまな人たちと繋がることができました。祭に本気で取り組んでいる人と関わることで、祭の本質や大切なことへの理解が深まり共通言語ができてきました。さらに人脈が繋がっていくことで、少しづつ祭エンジンの関西での広がりに貢献できたらと思います。
参考:祭研究女子会
石沼:地元は祭がない地域なので、参加することへの憧れがありました。また、大学時代は地域活性プロジェクトへ参加したりと、地域を盛り上げる一端を担うことに関心があった背景もあり参加させてもらいました。祭エンジン立ち上げ時から、webサイトやチラシ・リーフレットのデザイン等のクリエイティブを主に担当しています。
最近は色々とやらせてもらっていて、新サービス「会員制度」の企画や祭マガジンの執筆・運用にも携わっています。プロジェクトとして関わる地域の魅力を知るために「実際に現地へ赴く」ことを大事にしています。サイトで使用する写真撮影のためだけでなく、地元の人と交流し一緒に食事をして繋がりが生まれることで分かることも多く「現地の人のリアルな声」にその地域の本質があると考えています。
参考:祭マガジン
伊藤:プロジェクトリーダーとして祭エンジンの立ち上げに携わりました。現在は祭マガジンのインタビューや執筆、動画撮影・編集をしています。マガジンは週一ペースで出していて、いろんな角度からの祭を、私、角屋、石沼の3人は持ち回りで執筆しています。現地への取材は必ず出向くようにしているのですが、同じ温度感で熱い想いを持って祭を行っている人たちとの出会いがたくさんありました。祭業界は横の繋がりが少なく、孤独に頑張っている人たちも多いので「繋がりを作る」がこの祭エンジンの大きな価値になります。
このプロジェクトは、宮田さんの思想が中心にあって、私たちが共感しメンバーそれぞれが自分たちの想いをのせながら関わっています。根幹となる想いを色々な人に知ってもらうための場づくりが大切です。そのため、PRや認知活動に力を入れています。価値観や関心度が近そうなメディアに声を掛けたり、現在は自身が所属している団体のセミナー登壇を企画しています。継続的なコミュニケーションをしていくことで、最近では、世界に発信するに値する活動として「world marketing summit 2021」のサミットで祭エンジンを取り上げていただくことができました。
直近では、お互いを応援しあうコミュニティづくりを目的とした「会員制度」を充実させ動かしていきたいと思っています。祭エンジンは同じ価値観や想いを持った人たちが集まる「プラットフォーム」的な役割を持ち始めているなと思っていて。例えば、資金不足で修理ができないお神輿があった場合、祭エンジンに集まる仲間達に声をかけ、全国各地や世界中から応援が届き、お神輿が綺麗になる。そして地域の祭はさらに輝き、応援した人は地域とご縁ができる。そんなフローが実現できたら、新しい形で地域へエネルギーを届けられるのではと考えています。
想いのある人が繋がることで、お互いが声を掛け合い頼り合えるような関係性を会員同士でつくれたらいいなと思っています。何かをしたいと思った時に「祭エンジンに相談してみよう」と、ひとつの選択肢になるような地域貢献ができるプロジェクトとなりたいです。資金やリソース的に、ひとりだとできないことも10人100人と増えることで、できることが広がっていきます。まず目指すは100人。リリースの準備が整い次第、公式LINEからお知らせ予定です。
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執筆:深澤枝里子(FICC)
※「パーセプションフロー®・モデル」はCoup Marketing Company代表 音部大輔氏考案のマーケティングのマネジメントモデルです。引用の際は、上記クレジットの掲載をお願いします。
※「ブランドホロタイプ®・モデル」は、Coup Marketing Company代表 音部大輔氏が考案したブランドマネジメントの実施の根底となるフレームワークです。引用の際は、上記クレジットの掲載をお願いします。